やっつ ベースを語る 2
1998.05.30
いやぁ、XのHIDEさんって人気あったんだなあ、と思って。だって楽器屋行くとすごいよ。追悼ピック、追悼ギター弦、そして極めつけは追悼シールド!(パッケージには顔写真入り)。ここまで追悼グッズが出回ったミュージシャンが他にいるでしょうか。
さて、ベースのお稽古話のつづきだったね。今回は、すごいっすよ。それまでベース弾けなかったあなたも、これ読み終わった頃には、弾けるようになってるかも、ってぐらいの話題を展開させてもらいますんで。
これね、いきなり入会すんのもあれだから、見学とかしたんだね。去年(97年)の10月でしたけど。でも、ほら、「家庭の諸事情」 ってやつでなかなかカミさんのオッケーが出なくって。とりあえず「バイクのローンが終わったら通って良い」ということで、3月まで待ったんだね。しかし長かったな、ローン。前の会社を辞めてすぐに1週間ほどツーリング行って、なぜかバイク2台買いたくなって、4年ローンを組んでしまったという。で、最初の授業では、 まあクラス分けって感じで軽く弾いたのですが、一応先生のコメントによると「やっつ君は結構弾けるんだなあ」ということらしい。で、「じゃ、次回までにこの曲のソロをやってきてくれる?」と言いながら渡されたテープが、 リー・リトナーの「リオ・ファンク」ですよ。この曲は、この時までオレ知らなかった曲なんだけど、マーカス・ミラーという超スーパーベーシストの16小節にもおよぶチョッパーソロが収められてまして、丁度その時期の上級者クラスは(赤坂君という大学生しか他には生徒がいないのだが)、チョッパー奏法(右手を三味線のバチみたいに使うやつ、と言えば想像がつくでしょうか?)の練習にもってこいなこの曲をやってたわけです。で、別に先生は「ソロ全部を完コピ(注:完全なコピーの略。ほぼ間違いなくそっくりに弾けるってことね。オレの場合、勘コピって噂もあるが)しろ」って言ったわけじゃないのに、オレ勝手にそういうふうに思い込んで、「次週までに16小節こなせるようにしなきゃいかんのか。こりゃ一大事だ!」とか言って、その曲の耳コピ(注:耳でコピーの略。譜面や口コミ、風の噂などに一切頼らずに、テープやCDなどを繰り返し聴いて、同じフレーズを弾けるようにすること)が始まったんだね。いや~ 正直つらかった、その後の一週間。まず、こういう場合どうするかというと、その目的のフレーズを歌えるようにするのが先決なんだ。いきなりベースで弾こうとするよりも、自分の口でメロディを歌えるようになるまで聴きこんで、そこからベースに持っていったほうが早いから、まずはその練習。オレ、会社と家の間が車で1時間あるから、その間リオ・ファンク聴きっぱなし。しかも口ずさむもんだから、外から見ると異様に怪しい人物である。ソロの出だしからやると、こんな感じである。知ってる方はご一緒に。「ぺえーんぺえっぺ ととどおぺととぺっ ぺっ ぺーぺっ とっと とぺとと ぺえん ぺえっぺ とろろとっぺっ とろろとっぺっ ととぺえ ととどえどー」とこれで、4小節だから。どんなに大変かつ、みっともないかがわかるでしょう。とと、とか、とろろ、って書いてあるのは、実音じゃなくて、ミュート音とでも言いますか、「音程の無い音」なんだけど、「とろろとっぺっ」のフレーズがこのソロには何度も登場して、まあ言うなればこのソロのキモなわけです。とろろ部分の譜割りは、1拍6連ですから、容易じゃないんです。この最初のとろろをね、オレは譜面とかをもらわなかったから、正確な弾き方はわからんですが、とりあえず音で聴いてるぶんには、プル(人差し指で弦を引っ張る。上の言い方では ぺっ って音だね)の要素は感じられなかったので、サムピング(親指で弦を叩く)と左手のノイズ(何本かの指で同時にばちんと叩くと、出せる)の組み合わせでやってしまったんす。つまり、とろろを、RLR(右左右、の意)でやると。こうすると非常にラクというか、いや、ラクでもないんだが、少なくとも先生のやり方よりはラクに出来るんで。先生はどう弾いてたかというと、凄いんだ。右手だけを使って、サムピングとプルを異様に速く繰り返すんだよ。スピードは6連だからつまり表記すると、こうなる。「とぺととぺと とぺととぺと(これで2拍ぶん)」 う~ん、それはそれで、見た目はスゲー派手で良いんだが、なんか違うっつーか、原曲のニューヨークっぽさが損なわれるというか、(オレも何を言ってるんだか、よく分からなくなってきた)そういう力技では無いような気がしたので、自分流を押し通してしまったけど。このRLRを速くやる、っていうのはナルチョ(鳴瀬っていうベーシストの愛称)のプレイから盗んだんだけど、お手軽に6連を表現出来るのですごく気に入ってるんだよね。さて、月日は流れ、一週間後。夜の9時からのレッスンが始まりました(今では9時半からの開始になっている)。いや、結局オレこのレッスン当日までにちゃんとベース弾いて練習したのは日月の2日間だけだったんだけど、なんとか形になっちゃいましたよ。怪しい口練習のおかげでね!(笑)。この時間はオレと赤坂君と生徒2人だけで、つまり先生含め3人だけでやるので、ほとんど教本に関係なく、先生の好きなテーマをやるのである(笑)。で、ちょっとチョッパー(はっきり言ってこの呼び方は古くて、今時はスラップと呼ぶ人がほとんどである)をやってみなさい、というので、まあ適当にEのキーでやって、さりげなく件のRLRのフレーズをやったら先生が「何だそれ?」みたいな目をして「今のどうやってるの?」と聞くので、丁寧に教えました。オレは生徒だっつの。勿論、先生は先生ですごく上手な人なんですが、やっぱりオレと一緒で大学時代は頑張ってやってた人、って感じだから、今風のプレイは探求していないみたい。でさー、結局この日は延々最初の4小節を繰り返してばっかりで、オレやっと「クソッ 全部練習してこなくても良かったんじゃん」とか気づいて、もうバッタリ倒れそうになりました。ついには先生まで「その、やっつ方式のほうがラクかも」って言ってましたが、勝手にやっつ方式なんて呼ばれても困るっす。パクりだし(笑)。さ、これでひとつ技を覚えましたね。このフレーズをラクにやるためには、RLRのすぐ次の音をプルで長めに入れると良いんです。1弦開放なんてやったら、まんまナルチョです(笑)。口で言うと「んっ とろろぺーとろろぺー」みたいなことですよ。それじゃ、わかんないよな~。最初にそれに気づけよ>オレ。
2020年追記
このベースの先生、人柄も良くてスポーツ大好きな人でしたが、2013年7月頃にくも膜下出血で若くして他界されました。合掌