歴史的な行間

金曜夜は、会社帰りに行きつけの飲み屋(大宮にあるのに”つきじ”という。苗字だが)にて軽く一杯。この店では突き出しにいつも「しらすおろし」を出してくる。勿論、毎回毎回同じではないんだけど、かなりの高確率でしらすおろしなんである。もともとオレは大根おろしが苦手なんで、このしらすおろしは大概残してしまっていた。 

しかし。オレが尊敬し敬愛するエッセイスト東海林さだおさんがしらすおろしについて書いた一文を読んでから、それにチャレンジすると、なんとなく食べきることが出来てしまったのだ!これはすごい。文章が味覚を変えた! というわけで、東海林さんのすごい文を引用したい。たかがしらすおろしをこんなに素晴らしく表現出来る人は彼をおいて他にいないんじゃないか。また、その食い物がチープであればあるほど、この人の凄味を感じるのだなぁ(笑) 

以下引用(~滅びるなかれ大根おろし~より抜粋) 
前略 


特にしらすおろしは、おろし界の傑作だと思う。 
 海の塩気。大地の清涼。野菜からの水気。そこに加わるかすかな海の蛋白。水気ににじむ醤油。ちりばめられた繊維の歯ざわり。点々と散在するかぼそい魚肉の歯ごたえ。そして全体を貫いている大根の辛味。 
 かくして、もう一杯は、白玉の歯にしみとおって口中をかけぬける。 
 さらに、大根の消化酵素群、ジアスターゼ、タカラーゼ、オキターゼたちが、胃の中にすでに収まっている澱粉たちを、ホイキターゼ、ソラキターゼと消化していき、澱粉たちも、マカシターゼ、タノンダーゼと彼らを励ます。 
 さらに、ワサビと同じ成分の辛みのもとシニグリンが、死ニモノグリンになって食欲を増進させてくれる。


後略