12人の優しい日本人」を見ました※ネタバレあり
前にこのタイトルを見た時は「何をふざけておるのだ?」と思ったが(7人のおたくとかと同レベルに見てたんだと思う)、TSUTAYAで借りてきて観ました。
脚本は本当に良く出来ていると思う。さすが三谷だ。だが、残念ながら大笑いするような作品ではなかった。多分、笑の大学もそうなんだろうが、もとが舞台のものはやっぱり芝居小屋で見たほうが100倍楽しいんじゃなかろうか。本物を精巧にコピー、だけど質はもちろん良くなってますよ、っていう感じで日本人がこれまで工業製品でやってきたことを映画でやってるような感じだな。
バイクで言えば、ハーレーをお手本にホンダが作ったアメリカンって感じです。「これも悪くないけど、乗るならハーレーだな」と思いますです(笑)
それと、本家「怒れる男」に比べるとスカっとしない。メガネをずらして鼻をいじくる場面、ケンカになって思わず「Kill you!!!」と叫んでしまう場面など、本家では思わず「おお~~! そうだよそうだよ!」と頷いてしまうポイントがあるのに比べて、「優しい」では、せいぜいトヨエツがトレーを落とす場面ぐらいでしか「おおっ」と思えなかった。
設定でも、本家では「換気扇こそ回っているものの、蒸し暑く不快な部屋。おまけに雨まで降ってきて、誰もが早く家に帰りたい」って感じが伝わってくるが、こちらでは最初に飲み物の出前が頼めたりして、快適そうだもん。一人だけ会社の用事がありそうだが、他の奴らは暇そうだしなぁ。
何よりも「陪審員の持つ先入観」の設定がどうもなぁ。本家では「スラム育ちの悪ガキさ。ギルティ!」、こっちでは「若くて美人でお肌ツヤツヤ。無罪!」って、これじゃ感情移入すらままならな~い。
つまり、何が言いたいかというと、三谷さんって人間を描きたくてこうした密室劇(あるいは「グランドホテル型」)にしてんのか、ただ好きだから密室劇にしてんのか、人間が複雑に絡み合いながら色んなエピソードを見せるのに密室劇が便利なのか、ただ単に脚本を練り上げる技を見せつけたいのか、どれを一番主眼に置いてるかが分からないのです。
でも、多分「ザ有頂天ホテル」は見に行くと思うんだけどさ(笑)